現在、数nm~20μmまでの多孔体の空隙構造解析には主に水銀圧入法が、それ以下の細かい空隙はガス吸着法が利用されている。このうちセメント・コンクリートの測定に利用されている水銀圧入法に使用する水銀は劇毒物であり、取り扱いには細心の注意が要求される。今後、このような有害物質を使用した分析手法が将来にわたり利用できる可能性は低く、水銀圧入法に代わる空隙径分布の測定方法の確立が期待されている。また、劣化したコンクリート等の脆弱化な硬化体では、水銀圧入法の測定中の高い負荷により硬化体組織が破壊され、空隙構造を正しく解析できていない可能性がある。 近年、新たな空隙構造解析手法として、サーモポロメトリーが注目されている。多孔性材料の空隙中の液体の凝固点及び融点が空隙径によって異なり、示差熱量測定(DSC)による測定から細孔径分布が得られる。しかし、これらの報告は均質な空隙構造を有するシリカゲルや多孔質ガラスを用いており、不均質な空隙構造を有するセメント・コンクリートへの適用に関する検討は少ない。 本年度は、基礎的な多孔質材料としてセラミックス多孔体を用い、サーモポロメトリーによる解析を行い水銀圧入法と比較して検討を加えた。 その結果、サーモポロメトリーは溶媒の融解速度および発熱量を考慮する必要があるが、温度変化速度を低減させ、サンプルの量を小さくすることでその影響を抑制することができること、15nm未満の細孔半径の測定には溶媒として水が、それ以上の測定にはシクロヘキサンが適していることを明らかとした。以上の結果からサーモポロメトリーによって空隙構造を解析できる可能性を見出した。
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