PC橋梁において設計時予測を超えたたわみが発生し、それが維持管理上の問題となっている。この原因を解明するため、精緻な構成モデルを実構造物に適用し、その長期挙動を解明、予測することを試みた。 適用に先立ち、実験室試験体の数百から数千倍のスケールとなるため、大規模計算に適した形にプラットフォームの拡張を行った。また本プラットフォームは、表層からの水分逸散などmmスケール以下の現象を対象に構築・検証されてきた材料構成モデルと、ひび割れなどcmスケールの現象を対象に構築・検証されてきた構造応答モデルとから構成されるため、これらのモデルを同じ寸法の有限要素メッシュに適用した際に、合理的な解が得られるのかを確認しておく必要があった。 検討の結果、アスペクト比を一定値以下とした条件のもとで、構造物の部位に作用される外力や環境特性に応じた適切な寸法を設定すれば合理的な解が得られるのがわかった。 以上の準備を経て、構造解析を行った所、確かに実際に計測されたたわみ推移が解析でも再現されることが分かった。 既往の設計では収縮やクリープといった材料のもつ体積変化特性を均一とみなされていた。しかし実際の橋梁では環境作用の影響は、表面からの距離と時間に依存したものであり、不意均一であって、これを精緻に反映したことが本解析プラットフォームによってたわみ推移が再現できた要因であった。 本解析プラットフォームを用い、さらに様々な検討を行った所、たわみとは上フランジと下フランジとの体積変形量の違いに起因するものであり、例えば温湿度、季節変動、絶対寸法等により影響を受けるものであることが分かった。 この結果は上下フランジ間で体積変形量の差を小さくする、あるいは人為的操作により体積変形量を操作することで、力学的操作を伴わずともたわみを回復させ得ることを示唆しており、解析における検討においても同様の事象が確認された。
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