研究概要 |
本年度は以下の申請書目的(1)~(5)のうち、主に目的(3)~(5)の項目について検討し,硫酸イオンの浸透抑制については(1)水粉体比を0.3,γ-C2S置換率を80%とし,オートクレーブ養生および促進炭酸化養生を行うことで,硫酸イオン,炭酸イオンをはじめとしたイオンの浸透が著しく抑制されるとともに,硬化体内部のトバモライトの分解も抑制することが確認された.(2)本材料設計が,硫酸イオンの浸透を大きく抑制したメカニズムは,(a)γ-C2Sの炭酸化によりバテライトが生成し,(b)細孔空隙を充填して硬化体表面部が緻密化したことで,硫酸イオンの浸透を抑制したものと考察した.また,このような表面の緻密化は,硬化体内部のトバモライトの分解を抑制し,膨張性物質の生成を抑制するため,さらに高い耐硫酸塩性を示すものと考察した.(3)γ-C2S置換率を80%とした場合には,促進炭酸化養生を行わなくても,硫酸イオンの浸透が大きく抑制される結果とたった.これは各養生後に未反応で残存したγ-C2Sの溶解反応によって試料中のCa/Siモル比が大きく低下したことを考慮すると,γ-C2Sの溶解によって,遮蔽性に優れたシリカゲルや低Ca/Siモル比のC-S-Hが生成していることが推察されるが,今後詳細な検討が必要である. という結果を得た また,鉄筋腐食に関しては,普通ポルトランドセメント(OPC),γ-Ca2SiO4(γ-C2S),ケイ石微粉末(α-石英)を混和し高温高圧(オートクレーブ)養生および促進炭酸化養生した遠心成型鉄筋コンクリートを,実際の海洋環境(神奈川県横須賀市久里浜湾)に2年間暴露し,コンクリート中鉄筋の腐食性状を,形態観察,腐食減量,腐食電流密度,アノード分極(不動態調査),炭酸ガスと塩化物イオンの浸透および酸素拡散率を測定することで評価した.その結果,OPCをγ-C2Sで80%置換(OPC:γ-C2S:α-石英(質量比)=1:4:5)しオートクレーブ養生および促進炭酸化養生を行うことで,鉄筋腐食量は大幅に減少し,炭酸ガスおよび塩化物イオンの浸透や,酸素拡散率も大幅に減少した.特に暴露2年後の腐食電流密度の値は,通常の遠心成型コンクリートと比較して1/100程度(通常の遠心成型コンクリートの100倍の耐久性)となった.またγ-C2Sを80%置換した場合には,実暴露2年後も不動態状態を良好に保つことが可能となり,γ-C2Sを混和し,オートクレーブ養生および促進炭酸化養生を行った本材料設計は,長期的に鉄筋腐食を抑制する可能性が示された.
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