研究概要 |
本申請課題では,コンクリートの構成材料である骨材自身の空隙構造の実態を明らにすることを目的とした.具体的には,種々の骨材について,吸水および乾燥特性と,それに伴う骨材の体積変化との関係について精緻に捉える.そして,それぞれの特性に関する時間と量的関係を基に,骨材内部での水分の移動と貯留の場となるそれぞれの空隙群を分離し抽出することを試みる.現存する空隙測定機では捉え切れていない,コンクリートの乾燥・収縮現象の時間依存性をもたらす空隙の幾何構造について明らかにする. 平成22年度の計画概要には,1)骨材の吸水特性の把握と2)収縮特性の検討を行い,種々の骨材における特性値のデータを拡充すること.そして,吸水乾燥現象および収縮現象のどちらの現象とも整合する空隙構造の仮説をたてることが挙げられる.以下に平成22年度に得られた研究成果を示す. 1)空隙の連結関係を抽出するための骨材の吸水・乾燥特性の把握 100℃の炉で24時間の乾燥を行う従来の吸水試験では,骨材の吸水量とひずみの間に相関関係が確認できていない.そこで本申請課題では湿度調整した後に,吸水試験を行うことで,吸水現象にともなう質量増加と,収縮現象に寄与する質量増加を分離して抽出することを試みた.また,従来の吸水試験の多くは,吸水過程のみを対象としてきたが,本申請課題では,乾燥過程も検討することによって,骨材の乾燥過程と吸水過程の差として表れる,水分逸散の時間依存性についても理解を深める.この検討によって,空隙の連結関係を示唆する実験結果が得られた. 2)空隙の連結関係がもたらす体積変化の時間依存性の把握 本項目では,湿度を調整した環境において,吸湿過程と乾燥過程における骨材の体積変化を計測した.人工軽量骨材などインクボトル空隙を内包する骨材において,質量増加に遅れて体積変化が起きるインクボトル空隙特有の時間依存性を有する挙動が確認された.
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