研究概要 |
平成23年度の計画概要には,1)骨材の空隙構造の把握と2)収縮特性の検討を行い,種々の骨材における特性値のデータを拡充すること.そして,骨材の収縮現象について空隙構造を基に検討した.以下に平成23年度に得られた研究成果を示す. 1)骨材空隙構造の把握 空隙構造の測定には,水銀圧入法およびガス吸着法を用いた.水銀圧入法では骨材の直径10nm以上の空隙を,ガス吸着法では10nm以下の空隙と比表面積を測定した.既往研究でも報告されているように,収縮が大きい骨材にはガス吸着で測定される微細で比表面積の大きな空隙が多く存在することが分かった.本研究では10nm以上の比較的大きな空隙構造に大きな差異がないことを示した.これは骨材吸水率だけでは収縮の大きさを判断し難いことを裏付ける結果である. 2)骨材収縮特性の把握 骨材の収縮量と空隙構造の間には相関関係が確認された.既往の研究において報告されているように比表面積の大きな微細空隙との相関が高いことが確認された.ただしセメントペーストと骨材の2つの要素が統合したコンクリートの収縮挙動を解釈することは,それぞれの空隙構造を考慮するだけでは難しいことが分かった.この原因には骨材とセメントペースト間に形成される粗大な空隙である遷移帯が関与していると考えられる.したがって最終年度は,骨材とセメントペースト硬化体の間に形成される粗大な空隙構造である遷移帯を抽出し,骨材空隙-遷移帯-セメントペースト硬化体空隙の三要素間における水分移動現象について,その実態を明らかにする.
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今後の研究の推進方策 |
計画最終年度には,骨材およびセメントペーストを要素としたコンクリート全体の収縮現象について検討を行う.研究計画の大きな変更はない.ただし,前年度までの成果から得られた知見をもとに,コンクリート全体の収縮現象を把握するために必要な新たな検討を追加する.新たな検討には,骨材およびセメントペースト間に形成される遷移帯の抽出(空隙構造分析)と骨材-遷移帯-セメントペーストにおける水分移動現象の把握を予定している.
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