研究概要 |
鉄筋コンクリート構造物の劣化は塩害,中性化等,液状水や二酸化炭素,各種イオンなどの物質移動現象を支配機構とする現象である.その全容解明のためには,(i)毛細管空隙,ゲル空隙および骨材界面における遷移帯,さらには損傷による亀裂などの,物質の移流・拡散場となる様々なスケールの空隙構造,(ii)飽和・不飽和空隙中において毛管駆動および濃度・圧力勾配による液状水,各種イオンや気体の移動,らを高い次元で解明する必要がある.本年度は,海水を使用した毛管浸潤試験により,フライアッシュおよび高炉スラグ微粉末など,混和材の相違が液状水浸潤および塩化物イオン拡散性状に与える影響について検討した.水銀圧入法およびX線CTによる空隙幾何構造の測定の結果,混和材の供試体間で空隙構造に大きな相違が本試験では見られなかったことに対して,液状水の浸潤高さはフライアッシュ混和,スラグ混和,無混和の順で大きくなることが確認され,混和材の相違つまり硬化体壁面の化学組成の相違が,多孔体中の毛管張力や濡れ性状に影響を与えることが確認された.また,14日.28日,91日経過後の全塩化物イオン濃度分布を測定すると,液状水と同様にフライアッシュ混和,スラグ混和,無混和の順で塩化物イオン浸透が大きくなることが確認されたが,液状水の浸潤ウロントからの塩化物イオン拡散は無混和の場合には経時的に拡散が継続していたものの,フライアッシュ,スラグ混和コンクリートは,塩化物イオンの拡散が停止していることが確認された.多量に塩化物イオンが吸着したイオン拡散路においては,そこを通過する他の塩化物イオンの移動を著しく制限させるメカニズムが存在することが示唆された.
|