研究概要 |
鉄筋コンクリート構造物の劣化は塩害,中性化等,液状水や二酸化炭素,各種イオンなどの物質移動現象を支配機構とする現象である.その解明を目指すため,以下の研究を実施した. (1)海水による毛管浸潤試験の追試験 昨年度実施した毛管浸潤試験により,フライアッシュコンクリートにおいては,浸潤線からの塩化物イオン浸潤が著しく抑えられたことが確認されたが,試験期間は最長で91日であった.より長期の塩化物イオン浸潤性場をみるために,新たに供試体を作製し,フライアッシュ混和の有無による塩化物イオンの長期拡散性場を確認した.その結果,長期試験においても昨年度同様の傾向を得るに至った. (2)セメント系硬化体の空隙幾何構造の測定 フライアッシュの混和の有無が毛細管空隙幾何構造にどのような影響を与えるか,特に屈曲構造,収斂構造は如何のようになっているかをX線CT装置を使用し,3次元空隙構造データを取得し,データ解析することによって検討した.1mm片のセメントペーストを対象に,X線CTにより得られた空隙像をボクセルメッシュ化し,均質化法に基づく数値解析により,硬化体の見かけの拡散係数を算出し,さらに拡散屈曲度を算出した.その結果,低水セメント比においては拡散係数はフライアッシュの混和により拡散屈曲度が低減するが,高水セメント比においては,増加することが判明した. (3)屈曲路における物質移動特性 多孔体中の屈曲した流路における物質移流特性について実験的に検討した.屈曲した透明アクリル板を2枚配置することにより,模擬流路を再現し,白煙をトレーサーとした流れの特性を可視化し,分析した.その結果,空隙の幅に沿った流れは必ずしも達成されず,実質の流路と称すべき流れを呈することが判明した. (4)微小空隙中の拡散過程シミュレーション イオンや水の移流拡散式に壁面からの電気的影響を考慮した構成式を基に,微小空隙中の物質移動シミュレーションを実施した.壁面に陰イオンが多く吸着されるほど,塩化物イオン拡散が低減することが判明した.
|