| 研究概要 |
本研究は,光学的全視野計測技術の一つであるデジタル画像相関法(Digital Image Correlation : DIC)を用いて鉄筋コンクリート表面から劣化進行過程を捉えるための技術開発,モデル実験による各種劣化現象の機構解明に向けたミクロスケールな計測を行い,最終的にはマルチスケールな計測技術の開発を目標としている.
本年度は,ASRおよび鉄筋腐食を生じることによる劣化進行過程について,DICを用いてコンクリート表面から長期的な計測,また計測・解析方法の最適化を行った.その結果,鉄筋腐食やASRによりコンクリート表面にひび割れが生じる前にその兆候を捉えることができた.鉄筋腐食について,DICで検出可能な変状は,腐食が発生した時点では無く,腐食が進行してコンクリート表面に引張応力が発生した時点であり,腐食モニタリングと併用することが有用であることが分かった.ASRについては,無筋コンクリートにおいて亀甲状のひび割れが確認され,ひび割れ発生以前にその兆候を捉えることが可能であった.
DICの手法の問題として,計測条件の変化などによって長期計測を行う場合にはひずみ算出精度が低下することが分かった.実構造物への適用のためには,よりロバスト性の高い計測法とする必要がある.ただし,本研究で考案した画像間の差分の補正方法を用いることで,パターンマッチングにおけるサブセット自身の時間依存性の影響を極力排除することができた.
DICによるモニタリングの応用例として,ASRにより膨張を生じた後のコンクリートの膨張量を評価できる可能性が示唆された.来年度の検討課題の一つとしたい.
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