研究概要 |
本研究では,鉄道・道路橋を対象に走行列車・車両などの供用荷重による橋梁の振動応答を用い,橋梁-走行車両連成振動の順解析手法とソフトコンピューティング理論に基づいた,経済的かつ効率的な橋梁ヘルスモニタリング手法の開発を目的としている。具体的には,想定し得る損傷パターンを入力して交通振動順解析により構造応答を計算し,得られた結果について最適化手法(遺伝的アルゴリズム)を導入して実測値と比較することにより損傷パターンを特定する。 報告者は,これまで実橋梁の諸元に基づく単純支持高架橋モデルおよび面内振動のみ考慮する2自由度平面列車モデルを用いる基本的な損傷推定アルゴリズムを構築した。また,各種損傷条件を想定し,可能な損傷個所や損傷程度を設定し,提案した損傷同定手法の適用可能性を検討した。さらに本研究の構造損傷同定手法において,橋梁の損傷パターンを適切に設定することは,同定手法の精度および実用性に大いに影響するため,申請者は委員となっている土木学会関西支部における「橋梁の維持管理へのモニタリング技術の適用に関する研究会」メンバーの協力を得て,事前に実際の鉄道・道路橋梁の損傷箇所・程度を調査し,またそのような損傷による橋梁動的応答の変化傾向に対する把握も行ってきており,手法の実用化に備えている。また,開発した手法の妥当性を検証するために,室内走行実験を計画し,実験データと解析結果との比較検討も行っている。 上述研究成果は,本研究で目指している経済的かつ効率的な健全度評価手法確立の基礎となる。
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