研究概要 |
本研究では,構造物の可視的な性状と振動データを統合した構造センシング手法の確立を視野に入れ,建物に生じる部材の変形やクラック・剥離などの性状変化をリアルタイムに把握するための計測・解析システムの構築を目的としている.平成22年度には,まず,振動モニタリングに関して,対象施設のネットワーク管理者ならびに地震計メーカと協同し,高密度計測システムを構築・実装し,常時微動および強震データの長期集録を開始した.建屋内11箇所、免震層上下14箇所に設置された振動センサから得られた加速度データについて解析を行い,対象建物の周波数/モード特性の把握に取り組んだ.また,計測ポイントが多点にわたり,さらに常時計測を実施するため,データ伝送・集約が重要であることから,センサネットワーク管理システムの構築に取り組んだ.先の3.11東北太平洋地震(M9)においては,地震時応答を高密度に集録し,その後の余震も継続的に記録した.併せて,免震層に設置されたWebカメラにおいては,免震システムの地震時挙動の映像が収録された.これらは極めて稀なことであり,これまでの免震建物の記録として最も貴重なものの一つになると考えられる.平成22年度は一次解析を行ったが,次年度にさらなる入念な解析を実施する. 画像集録システムに関しては,高精度CCDカメラによる長期集録を実現するため,データの効率的な管理のための解析処理手法の構築に取り組んだ.一般に,画像データは集録装置が高精細になるほど増大し,その分析に時間を要するため,集録を継続しながら,着目する特徴量のみを検知する画像解析手法の考案を図った.平成22年度においては,対象部位の変形と可視的な脆性損傷を自動的に検出・評価する画像処理アルゴリズムの構築に取り組み,特に処理に利用する画像フィルタの設計を行った.次年度には実装化を図る.
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