近年の強震観測網の充実により、断層近傍において、周期0.1秒前後の短周期成分が卓越し、水平方向地震動よりも大きな最大加速度を有した上下方向地震動が観測されている。一般的な橋梁の上下方向の固有周期が0.1秒前後であることから、こうした短周期成分が卓越した大振幅の上下方向地震動が橋梁に作用した場合には、単柱式RC橋脚であっても引張力を含む大きな軸力変動が橋脚基部に生じる。橋梁の上下方向の固有周期に対応して生じる軸力変動は、水平方向の固有周期に対応した橋脚上端における水平変位の変動に比べて短周期で生じるが、こうした断層近傍地震動特有の卓越した上下方向地震動による短周期、かつ引張力を含む大振幅の軸力変動がRC橋脚の破壊性状や水平荷重-水平変位関係に及ぼす影響は実験事実に基づいて明らかにされていない。 そこで、平成22年度は、RC橋脚を模擬した柱試験体を製作し、引張力を含んだ軸力変動を与えた上で、水平一方向に静的正負交番繰返載荷実験を行った。軸力変動については、事前解析結果に基づいて最大引張応力を1N/mm^2もしくは2N/mm^2とし、水平変位の変動周期の10分の1の周期で、最大水平変位時に最大圧縮軸力となるような軸力と曲げの連成条件で載荷した。従来、ラーメン式橋脚や建築物の柱部のように、水平変位の変動と軸力変動が同位相で生じる場合の載荷実験がなされているが、その場合に比べると、塑性ヒンジ部のコアコンクリートの損傷進展が激しかった。これは、水平変位の1サイクルの間に複数回、圧縮力および引張力のピークが軸力と曲げの連成で生じ、特に軸方向鉄筋の座屈後は軸力変動によってコアコンクリートの損傷がより進展するためである。また、以上の実験事実に基づく解明に加えて、ファイバー要素解析に基づいて実験の再現解析を実施し、解析の精度検証を行った。
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