研究概要 |
最終年度は,各層4本の柱部材を有する4層搭状構造模型および小型起振機を用いてリファレンス型およびリファレンスレス異常診断を実施した.以下に得られた知見をまとめる. 1.損傷箇所推定への特徴量算出法の感度解析 最終年度は,任意の層の1本の柱を除去した状況を損傷として考え,損傷位置同定実験を行った.模型実験を通じて,適切にアトラクタを再構成しそれを評価することで診断対象のリファレンス型異常診断が可能となることを確認した.特に,アトラクタの評価として,損傷前後での交差予測誤差およびリカレンスプロットの定量評価手法である%recurrenceが有効であることを確認した.健全時の情報を必要としないリファレンスレス型においては,カオス入力信号と応答のアトラクタを評価したが,各層に一つセンサを配置するだけでは損傷位置同定は困難であることが明らかとなった. 2.常時微動のアトラクタ評価に基づく異常診断法の開発 供用中橋梁など診断対象によってはカオス信号を入力する強制加振が困難となる状況が発生する.本項目では,上記の構造模型を対象として,複数のモードが励起されるインパルス応答を常時微動と想定し損傷位置を同定できるかどうか確認した.インパルス応答の1次モード相当のウェーブレット係数の時刻歴からアトラクタを再構成し,損傷前後で%recurrenceを評価することで1本の柱部材を除去した層を特定することに成功し,損傷前後で応答波形の異なる常時微動においてもアトラクタを評価することが有効であることが確認された.
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