研究概要 |
1.幅広供試体による腐食鋼板の降伏・引張強度評価法の提案 重度に腐食した鋼桁より幅広タイプの供試体26体を製作し,引張試験を完了した.本試験結果から,当て板補強や鋼板接着といった性能回復工法を適用する際に有益となる板の力学挙動を提供した. (1)腐食の激しい鋼板は,応力集中の影響が弾性域内で卓越し,最小板厚位置から亀裂が生じ破断する. (2)残存最小板厚と最小平均板厚の位置と大きさの関係が引張強度評価および破断面推定に重要となる. (3)腐食鋼板の降伏荷重は,最小平均板厚を有効板厚に適用することで強度評価可能であるが,引張強度は最小平均板厚を用いると若干危険側の判断となる. (4)引張強度は板厚標準偏差と非常に強い相関があり,初期板厚と標準偏差から推定が可能である. 2.実験と強度解析を合わせた残存強度評価法の改善 上記に示した腐食鋼板の引張強度解析を有限要素法により実施し,過去に研究代表者らが実施したJIS5号試験片による腐食鋼板の引張強度実験および解析結果と併せて,板の引張・降伏強度評価法を改善した.また,引張試験結果と解析結果がよく一致していることから,有限要素解析による今後の研究発展の可能性を示した.本解析結果の一部を,次頁に示すように国際シンポジウムにて発表した. また,重度の局所的な腐食減肉を有する鋼板の圧縮強度評価について,平均偏心量と平均板厚の比をパラメータとして荷重偏心の影響を定量的に強度評価に考慮することを試みた. 3.超音波板厚計を用いた腐食鋼板の実用的板厚評価法に関する研究 本研究課題を遂行する過程において,レーザ変位計による板厚測定精度を比較検証するため,ポータブル超音波板厚計を用いて腐食表面形状を測定した. (1)腐食鋼板における超音波板厚測定結果は,若干ではあるが板厚を過大評価する傾向にある. (2)測定結果のばらつきはユニット数を増加させることで大幅に抑えられる. (3)超音波板厚計を用いたポイント測定により腐食鋼板の板厚を安全側に評価できる式を提案した.
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