研究概要 |
本年度は,計算プログラムの3次元化,不飽和土の挙動の再現,並列計算による計算効率の向上の3つを目的として取り組んだ. 計算プログラムの3次元化については,昨年度までの2次元解析のプログラミングの経験をもとに,大きな問題なく終了している.3次元状態で土粒子と水の挙動を微視的なモデルで同時に解くという試み自体が新規性のあるものであり,その計算アルゴリズムの提示は,今後の関連する研究に対して有益な情報である.特に,3次元状態の境界埋め込み法に関する計算アルゴリズムは,地盤工学のみならず,計算工学の分野でも有益な情報と考えられる. 不飽和土の表現については,水の表面張力の効果を導入する必要があるため,数値流体解析の分野で広く用いられている表面張力モデル(CFSモデル)を導入し,各種検証を実施した.検証の結果,水中の気泡の動きや壁面に付着する水滴の挙動を表現できることを確認した.その上で,不飽和状態の粒状体内部の水の挙動の再現に取り組んだ.3次元状態において,粒子間に水滴が付着した際のメニスカスの形状など,定性的な挙動については再現可能であることを確認したものの,地盤材料全体としての不飽和土の挙動の再現にまでは至っていない,そのため,定量的な評価による検証が今後の課題である. 並列計算については,MPIによる並列計算用のプログラムを作成し,粒子-流体連成場における計算の効率化について検証した.並列計算を導入しない場合に比べて,若干の計算の効率化が確認されたが,並列数が多い場合の十分な効率化は未だ達成されていない.特に,粒子挙動の計算に関する動的負荷分散が大きな課題となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不飽和土の挙動再現では,計算コストが今まで以上に高くなることが判明したため,最終年度に予定していた並列計算による計算の効率化を前倒しで実施した.現段階では,十分な効率化までには至っていないため,不飽和土の挙動に対する定量的な検証に踏み込めていない.この点に関しては予定よりも若干遅れが見られるが,並列計算による計算の効率化を前倒しで実施しているため,研究全体の進展状況としてはおおむね順調と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
まず,並列計算について,十分な効率化を確認し,その後,当初の予定通り,不飽和土内部の微視的な挙動の再現,および,締固めなどの地盤材料の特徴的な挙動を表現し,提案する解析手法の利点と欠点を整理した上で,その適用限界についても言及する.
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