研究概要 |
本研究は,安価に実施可能な地盤震動の計測技術を用いて,盛土の排水機能の健全度診断技術を開発するものである.特に,盛土の震動特性に着目し,震動特性(固有振動数など)の絶対値でなく,降雨によるその変化量に着目している. 平成23年度は,平成22年度に試みた,ベンダーエレメントによる,含水量の変化とせん断波速度の変化の関係の計測について,器具を改良し,再度試みた.その結果,締め固められた地盤では含水比の増加により,せん断波速が有意に低下することを確認した.この低下の程度は大きく,剛性の低下に換算して擁壁の固有振動数の変化に置き換えたところ,常時微動計測により評価可能なレベルの変化であった.よって,排水溝のつまり等に起因する地中水の増加を,振動計測により把握できる可能性が高いことを確認した.ただし,実際には地盤内に一様に水が増加するわけではないため,分布状況を把握する必要がある.そこで,表面波探査用のセンサーを用いて,高密度にせん断波速度の分布を把握することを試みた.しかし,表面波探査結果をもちいた分析は道半ばである. また,地盤の劣化の別形態として,細粒分の抜け出し等の影響を評価する実験を実施した.ここで,平成22年度に作成した土槽の問題点を改善した.実験の結果では,細粒分の抜け出しに伴い,せん断波が低下する結果となった.これにより,排水溝からの土粒子流出の問題や,河川・湖沼・海岸における吸出しによる陥没の危険性を振動により評価できる見通しが得られた.ただし,細粒分が抜けた地盤では,含水比の変化によるせん断波速度の変化の傾向が,締め固められた地盤とは異なる場合があった.引き続き,実験ケースを増やして検証を行っていく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験ケースは不足気味であるが,現在までに室内実験レベルでは,実験方法の確立とともに,実験のデータ収集も行えている.また,実物規模における評価についても,数値解析レベルでは実施できている.
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