研究課題
衛星降水マップは、世界のほぼ全域を対象とした降水量の推定値が、比較的高解像度かつリアルタイムで得られることから、水分野での応用の期待が高い。しかし、その精度には改良の余地がある。本研究では、リトリーバルアルゴリズムに起因する誤差と、サンプリングに起因する誤差の両面から、衛星降水マップの精度改良を図る。本年度は、とくに洪水対策への利用で重要となる強い雨の推定精度に着目した。研究代表者が開発に関わっている衛星降水マップであるGSMaPは、熱帯降雨観測衛星TRMM搭載の降雨レーダPRによる降水の推定を基準として用いているが、PRおよびGSMaPともに降水強度の過小評価傾向が指摘されている。このことから、PRによる降水強度の推定を見直すことが、GSMaPによる精度改良にとって欠かせないと考えた。PRによる降水強度推定の標準アルゴリズムは、現在改良が進められており、最新版(V7)の公開が2011年度に予定されている。研究代表者は、V7の評価版を入手して、その詳細な解析を行った。現在使われているV6に比べて、V7は平均的な降水量が数%程度増加しているが、特に50mm/h以上の強い雨が大幅に増えている。その原因として、表面参照法を修正した効果が大きいことが示唆された。ただし、強い雨の出現頻度について、地理的分布や観測角の依存性を調べると、不自然な点が見られた。この点を、V7の開発チームに報告し、アルゴリズムの再修正が行われた。以上のことから、PRによる降水推定(特に強い雨)の改善に貢献することができただけでなく、GSMaPがV7を基準とすることで、近い将来に、その再現精度を改良することにも貢献できたと言える。以上の結果は、2011年度に国際学会等で発表する予定である。
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Jounral of Research in Engineering Technology (Faculty of Engineering, Kasetsart University)
巻: 7 ページ: 71-78