衛星降水マップGSMaPの基礎として重要な役割を果たしている熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載の降雨レーダ(PR)による瞬時降水強度等の推定値のプロダクトがVersion7(V7)に更新され、平成23年7月にリリースされた。V7では、更新前のVesion6(V6)と比べて、陸上での50mm/h以上の強い雨が増えていることが分かった。中には300mm/hという非常に雨の強い推定値も存在している。一部には、グラウンドクラッタを雨と見間違えたケースがあるが、大部分については、明らかな誤りとは言えない。V7では、表面参照法が修正された結果、強い雨を適切にとらえることができるようになったため、強い雨の推定値が増えたと説明できた。続いて、V7の強い雨を雨量計により直接検証した。直接比較するためには、PRが推定する降水強度のタイムスケールに近い1分間解像度の雨量計データが必要である。このようなデータを気象庁から入手し、検証を行った結果、日本域における50mm/h以上の推定値はやや過大評価とみられるが、そのバイアスは+50%を超えないと結論できた。一方で、V6の50mm/h以上の雨はバイアスがV7より大きかった。日本域では陸地が狭いため、表面参照法が十分に働かず特にV6では降水強度を過大評価していたが、V7では改善されたことを確認できた。本成果は国際学会で発表した他、国際誌に投稿済みである。 次に、GSMaP作成に用いられるマイクロ波放射計が表層土壌水分量にも感度を持つことに着目し、マイクロ波放射計による輝度温度観測値の変化から観測間における降水の有無を判定する手法を開発した。既往の方法でGSMaPを作成する際には、マイクロ波放射計の観測のない時間帯は、静止気象衛星搭載の赤外放射計の観測により補っているが、今回開発した手法は、植生の少ない場所では同等からそれ以上の精度を示した。
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