研究概要 |
水循環において重要な役割を果たす土壌水分の時空間変動の把握が求められている.しかし,土壌水分の時空間連続的な観測は困難であり,モデル推定値には不確実性が含まれる.そこで,地表面植生水文モデルに汎用性が高いデータ同化手法を導入し,土壌水分の最適な時空間分布を推定することを目的とし,本研究課題を実施した. 地表面植生水文モデルに導入するデータ同化の観測情報として衛星観測情報を利用する.ただし,土壌水分の観測頻度は1日に2回であり日周変化を把握できないため,毎時の観測値が得られる表面温度を同時に利用することを検討する.そのため,土壌水分だけでなく表面温度も同時に観測情報として地表面植生水文モデルに与えることのできるデータ同化システムを構築した. 構築したシステムを用いてシミュレーションを実施したところ,土壌水分を観測情報とした場合,観測情報が得られる時間間隔が数日以上と長くとも,土壌水分及び潜熱フラックスの推定精度向上に一定の効果がみられた.一方,表面温度を観測情報とした場合には,土壌水分及び潜熱フラックスへの推定精度の向上効果は小さく,効果がみられなかった.したがって,土壌水分の推定精度向上には,数日以上の観測頻度であっても土壌水分の観測値を用いたデータ同化が有効であったが,高頻度で観測される表面温度を用いたデータ同化は期待したほど有効ではなかった.ただし,表面温度を用いたデータ同化は顕熱フラックスなどの熱収支項目には有効であった. 地表面植生水文モデルに含まれる不確実性を低減するために,構築したデータ同化システムを用いてモデルで使用されるパラメータの推定手法を提案した.具体的にはパラメータを状態量のように扱い,データ同化時に土壌水分の観測情報が得られる際に.状態量と同時にパラメータも更新するような仕組みを提案した.
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