研究課題
昨年構築した,流動水質モデルと経済モデルが同時に進行する動学(非定常)モデルについて改良を行った.本年度においては環境規制の経済的波及効果が成長率に影響するよう,また,汚濁負荷総量規制により負荷の大きい産業から負荷の小さい産業へと移行する経済構造の変化を予測できるよう,経済モデルの改良を行った.また,流動・水質の両モデルについても精度向上の検討を行った.結果の一例を示すと,大阪湾奥部の表層COD濃度に5mg/Lという環境基準値を設け,それを超過しないように近畿地域におけるCOD発生量を規制するには,1963年において上限約14万t,70年において上限約14.3万tの負荷量を許容することができると算定された.この上限値を基に,規制を加えた場合,2005年度における実質生産額の変化は約430億円であった.さらに,浅場として干潟,特にその浄化機能にのみ着目し,干潟を新たに造成した場合の,海域における水質改善効果と陸域における経済効果を推定した.干潟は,陸域からの負荷を十分に活用できるよう,淀川および大和川河口に225haの干潟を造成する(90年に造成)こととし,その浄化能を水質モデルに付加して数値計算を行った.水質計算結果より,この干潟の設置は90年以降の汚濁負荷を19%減少させることと同様の効果を持つと推定された.また,この19%分の負荷を環境規制として新たに加えた場合,経済損失は10年間で4千億円を超え,想定される造成・維持コスト(約800億円)を上回る.以上のような結果から,総量規制より経済的にも優れた浅水空間の創造が可能な時期と適切な配置がある可能性が示され,本モデルの構築により包括的な評価が可能になったと言える.本研究では,流動水質モデルと経済モデルの統合化を主目的としたために,パラメータの設定などには改良の余地があり,今後も推定精度の向上を図る予定である.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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土木学会論文集B2(海岸工学)
巻: Vol. 68, No. 2 ページ: I_446-I_450