研究概要 |
平成22年度は波浪推算モデル,高潮モデルおよび海洋流動モデルによる海面抵抗係数の逆推定と推定されたパラメータの比較検証を行うため,主にアジョイントコードを用いたデータ同化システムの構築と改良を行った.さらに,作成したシステムの妥当性を検証するため,仮想の海域を対象として海面抵抗係数の目標値(仮の真値)を設定して予測計算を行い,目標値を用いて得られる推算値を仮想の観測値としてデータ同化の数値実験を行い,任意の初期値から設定した海面抵抗係数の目標値が正しく逆推定されることを確認した.ここでは,単に妥当性を検証するだけでなく,実海域に適用にむけて課題となる膨大な計算時間を短縮する工夫や観測値とパラメータの設定条件による逆推定精度について検討を行った. 超強風時における海面抵抗係数については,現地で直接測定することや室内実験施設の整備が非常に困難であったため,これまでは,概ね風速25m/s以下の条件での検討により提案された風速に関する単調増加関数を外挿して与えるのが一般的であり,超強風条件での推算結果が過大となることが懸念されている.これに対して,本研究で開発された手法を現地観測データに適用することができれば,全国港湾海洋波浪情報網で既に観測・蓄積された波浪,流速データを活用することにより,試行錯誤により設定することなく自動的に超強風条件での海面抵抗係数の最適値を推定することが可能となる.この知見は,今後地球温暖化に伴って甚大化が懸念されている高波災害や高潮災害の予測精度向上により沿岸防災に資することが期待される.
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