研究概要 |
平成23年度においては,次の3つのアプローチから黒部川扇状地における地下水位の漸減現象の原因解明を試みた.(1)河川流量減少説:ADCPを用いた同時流量観測を実施し,失水量を算出する.(2)地下水利用の増加説:統計データを用いた分析.(3)土地利用変化説:統計データを用いた分析.その結果を以下のように詳解する. 第一に,ADCP(超音波ドップラー式流向流速計)を用いた高精度の同時流量観測を実施し,区間あたりの失水量と得水量を算出した.その結果,前年度と同様の傾向が得られたことから,この区間における失水量と得水量を明らかにすることができた. 第二に,既存データとルーチン観測データを用いた統計分析によって,降雨や降雪による地下水位への影響は認められなかった.しかしながら,黒部川の河川流量・河川水位との関係は密接であることがわかり,それらの増減傾向と地下水位の増減傾向はほぼ一致していた.河川流量は上流部における流量制御の影響があることから,これらが地下水位へ直接的に影響していることが推察される.また,1時間地下水位データを用いた分析では,事業者による地下水揚水の影響を捉えることができた.また,2011年3月11日の東日本大震災による富山県内の地下水位への影響も評価できた. 第三に,分布型水循環モデルの一つであるMIKE-SHEモデルを用いて黒部川流域の流域水循環モデルを構築した.表面水の移動や河川水の状況を再現することはできたものの,地下水位を精度良く推定することには至っていない.次年度には地下水量を精度良く推定できるだけのボーリングデータを集め,モデルに反映する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として,数値実験の精度が挙げられる.これまでの研究によって,おおまかな地下水の実態は明らかになっている.地下水モデルにおける精度向上は,ボーリングデータの密度に依存してくるため,次年度も引き続きボーリングデータを収集する必要がある.
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