研究概要 |
平成23年度は移動床を設置した造波水路において砕波帯の流速場と浮遊砂濃度を計測し,乱れの強さと底質の浮遊量・輸送過程との関係を計測結果のアンサンブル平均値をベースに評価した.流速場と浮遊砂濃度の計測はそれぞれParticle Image Velocimetry(PIV)と光学式濁度計を使用して行った.得られた結果を以下に示す.砕波クレスト通過後,戻り流れによって計測領域よりも岸側で発達した比較的強い乱れエネルギーが次の波浪が来襲する直前まで沖方向へ輸送される.この戻り流れによって輸送される乱れエネルギーは底面近傍まで到達し底質の浮遊・拡散に大きく寄与する.砕波クレスト通過後,乱れが発達する時間スケールは砕波形式と水深によって大きく異なり,崩れ波砕波では水深の減少に伴い乱れが発達する時間スケールは増加し,巻き波砕波では減少する.本実験条件では,巻き波砕波の底面近傍における乱れエネルギーと浮遊砂濃度は崩れ波砕波よりも大きな値を示す一方,水平流速を比較した場合,両砕波形式で大きな違いは確認されなかった.この結果は乱れの生成には砕波形式が強く関与していること,さらに,砕波帯における浮遊砂濃度の推定には従来用いられてきた流速をベースとしたパラメータのみでは不十分であり,乱れを陽的に与えた浮遊砂濃度の鉛直フラックスが必要であることを意味する.固定床水路における砕波帯の流速場に関する情報は比較的多く報告されていたが,得られた情報から底質の浮遊量・輸送過程を評価することが困難であった.移動床水路における砕波帯の乱れと浮遊砂濃度の関係をアンサンブル平均値をベースとして評価することにより,これまで不明な点が多かった砕波により生じる乱れが底質の浮遊量や輸送過程に与える影響を特徴化することに成功した.
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