研究課題
本研究は、地球上の任意の領域で、河川流量と洪水氾濫とを同時に解析する洪水予測モデルの開発を目的とした。従来の洪水シミュレーションは、山地に降った降雨が河川に到達するまでの降雨流出過程と、河川が溢れて平野部に広がる氾濫過程とを分けて解析することが一般的であった。我が国のように、流域の大部分が山地で占められており、下流部の河川沿いには連続堤防が整備されている場合には、そのような手法でも特段問題はない。それに対して、世界の大規模洪水を対象とする場合には、流域内で広域の氾濫が広がるため、降雨流出と洪水氾濫とを分けて取り扱うことが難しくなる。そのため、両者を一体的に捉えたうえで、洪水の浸水深や継続期間などを予測する技術が必要となる。本研究で開発したモデルは、降雨流出氾濫モデルの意味で、Rainfall-Runoff-Inundation Model:RRI Modelと呼んでいる。モデルの開発は順調に進み、平成23年度はモデルの開発と平行して、数多くの実証研究を行った。とくに2011年タイ・チャオプラヤ川流域の洪水においては、洪水がピークを向かえる前に緊急対応のシミュレーションを実施し、その予測結果はアニメーションとともに各種報道機関で取り上げられた。その後、この結果が概ね妥当であったことが確認されるとともに、数値シミュレーションと詳細な現地調査によって、タイ洪水の広域氾濫現象に関するメカニズムを分析した。また、2010年パキスタン洪水を対象とした解析では、インダス川全流域(約10万km2)を約2kmのグリッドサイズで解析することに成功した。既に国内外の一部の研究者や実務者がRRIモデルを使った応用研究を開始している。また研究代表者もタイ洪水後の治水対策効果の分析など、より実務に即した応用も進めており、本研究の実施により、新たな洪水シミュレーション技術が提案・開発できたものと考えている。
すべて 2012 2011
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土木学会論文集B1(水工学)
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