研究概要 |
本研究の目的は,ネットワーク・ゲーム理論の枠組みに基づき,社会的ネットワークの形成と人々の間の協調関係の構築について,そのメカニズムを理論的に解明することである.今年度は,社会的ネットワーク上においてリンクで結ばれた主体どうしが協調ゲームを行う状況を想定し,ネットワークの構造が協調関係の形成に与える影響について分析をおこなった.その際,ネットワークの位相幾何学的特性として,スケールフリー性とスモールワールド性に着目した.具体的には,Scale Free (SF)ネットワーク,Erdos-Renyiネットワーク,Watts and Strogatz (WS)ネットワークを取り上げ,ネットワークの構造が協調形成に与える影響について分析を行った,さらに,次数,平均距離,近接性,クラスター性といったネットワーク指標と協調形成の関係についても分析を行った.分析の結果,次の命題を得た. 命題1.すべてのネットワークにおいて,リスク支配的な行動が選択される確率が高い. 命題2.リスク支配的な行動がない場合,協調行動を選択する割合はいずれのネットワークも0.5で等しい.また,割合の分散は,近接性が高く,クラスター性が高い程小さい. 命題3.SFネットワークでは,非協調行動が選択される確率が他のネットワークと比較して高い 命題4.WSネットワークでは,平均距離が短い程,協調行動が選択される確率が高い. 以上より,協調行動の自律安定的な存続において,中心性の高い主体の存在は必ずしも良い効果をもたらすとは限らないこと,また,各主体が開かれた交友関係を持つことが重要であることが明らかとなった.
|