本研究の目的は,社会的ネットワーク上における人々の間の協調関係の構築について,そのメカニズムを理論的に解明することである.本研究で提案したモデルでは,個人が社会的ネットワーク上でつながりを持つ相手と協働活動(Face to Face communicationとも解釈できる)を行うために互いを訪問し合うという枠組みの下,各個人の活動に関する効用最大化行動の結果実現するナッシュ均衡解を任意の社会的ネットワーク及び交通ネットワークにおいて解析的に導出できることを明らかにした.その上で,今年度は以下の成果を得た. 1.社会的ネットワークの成長及びコミュニケーションを通じた主体間の相互作用の強度の増加はともに,任意の主体間の均衡における協働活動水準を増加させること,また,交通ネットワーク整備によって交通費用が減少するならば,任意の主体間の均衡における協働活動水準は増加すること,さらに,両者ともその結果として全ての主体について厚生が改善することを解析的に明らかにした. 2.Nash 均衡における協働活動水準は,社会的最適水準よりも過少で非効率的であり.単位あたりの活動に適切な水準の(soij=θ∑gki vki)補助金を与えれば,補助金政策下での均衡状態として社会的最適状態が達成されることを解析的に明らかにした. 3.主体の立地選択を内生化した枠組みへと拡張し,スター型の社会的ネットワーク及び円形都市を想定した数値事例の分析結果より,相互作用の強度の増加は立地集積をもたらすこと,交通費用の低下に伴って分散-集積-分散という立地パターンが順に発現することを示した. 上記の成果については,既に国内学会での発表及び論文(査読無し)投稿を行った.また,1及び2の成果に関しては既に国内外の査読付き論文集へ投稿済みであり,3の成果に関しては国内学会にて発表予定である.
|