研究概要 |
本研究では廃自動車などの使用済み製品の質と量に関する不確実性と,リサイクル企業の技術や立地との関係を明らかにする.使用済み製品の発生はリサイクル企業よりも消費者に強く依存していることから,リサイクル企業が使用済み製品の品質や発生量に関する情報を事前に把握することは難しく,リサイクル促進の妨げになっていることが指摘されている.平成22年度の研究では,使用済み製品から得られるスクラップに異質性があるときに,地域に立地する企業数やスクラップ価格などの条件の違いによって,低品質なスクラップから高品質な製品を作り出すリサイクル技術の水準がどのように変化するかを明らかにした.その結果,企業数が増えるほど,リサイクル技術の水準は下がっていくことが示された.これは企業数が多いほどその地域の市場競争力が強まり,1企業あたりのプライスコストマージンが小さくなるため,リサイクル技術に投資する費用を捻出しにくくなるためである.また低品質スクラップの回収に費用がかかり,価格が高くなるほど,リサイクル技術の水準は下がっていくことが示された. また,使用済み製品の排出量変動を考慮した施設配置モデルを提案した.このモデルから,使用済み製品の排出量の変動が大きいほど,リサイクル技術の向上による施設配置の変化のタイミングが遅れることが明らかになった.さらに排出量の変動は,リサイクル技術の向上によるリサイクル促進を阻害する要因となり得ることを示した.排出量の変動が大きく,かつリサイクル技術が未発達な場合に状況での環境規制は,一部の地域において生産の萎縮をもたらす可能性を示した.
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