研究概要 |
使用済み製品の排出量は製品の寿命や消費者の消費行動に依存するため,リサイクルする側が使用済み製品の質や量について予測するのは難しく,リサイクル企業が立地を決める上で,使用済み製品が十分な回収量が得られるかは重要な課題である.そのような中,小型家電製品のリサイクルなどにおいて自治体が中心となって使用済み製品を回収しリサイクル企業に有償で売却する地域が見られるようになった.リサイクルの促進やリサイクル企業の集積を考える上で,こうした市場を通じた回収が回収システムの違いがリサイクル企業にもたらす影響を明らかにする必要がある. 本研究では,地域によってリサイクル企業が利用できる回収システムの異質性に着目し,回収システムの違いがリサイクル企業にもたらす影響を明らかにした.具体的には,リサイクル企業の中でも,使用済み製品を集荷する役割を担っている問屋を考え,市場を通じて回収する場合(市場回収システム)と直接回収する場合(直接回収システム)について,使用済み製品の排出量に生じた外生的な変動が使用済み製品の回収量や利潤にもたらす影響を明らかにした.その結果,直接回収システムよりも市場回収システムの方が回収量は少ないが,排出量の外生的な変動に対して安定した回収が行われることが示された.さらに市場回収システムにおいて回収業者が回収を専門的に行い低コストで回収することができれば,より多く,かつ安定した回収量が達成できることを示した.以上から,使用済み製品を回収して問屋に販売するという市場回収システムは安定的な回収量を維持する上で有効であることがわかった.
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