研究概要 |
統計情報の流通施策や情報観測・通信技術開発の進展に伴い,多種多様な空間情報の整備が進んでいるが,それらを活用した統計解析手法の開発は空間情報整備に遅れを取っており,異種の空間情報を利用した地域分析の実行には課題が多い.そこで本研究は,複数の学問領域にて研究されてきた既存の空間統計解析理論の体系化を通してその融合を図り,空間情報を十分に活かした地域分析手法の構築を模索し,土木計画のより一層の精緻化を目指す. この研究ではこれまで,地点や地域の属性情報の時空間相関を構造化して回帰分析を行う空間過程モデルや空間計量経済モデルに着目し,地域分析への応用可能性を検討してきた.しかし,分析対象の情報には,事象の分布傾向が意味を持つものも存在する.空間分布傾向の分析手法には,空間事象間の距離分布に着目したK関数法など空間的集積の有無を検出する手法が提案されてきているものの,多くは位置の集積のみに着目し,事象の属性値情報を同時に分析対象とするものは少ない. そこで本年度は,空間疫学分野で提案されている,位置・時期と属性値の双方を分析可能な時空間スキャン統計に着目し,地域分析への応用可能性を検討した.不動産取引価格情報を用いた分析の結果,時空間スキャン統計により,不動産取引が集積する時間・場所や,高・低価格取引が集積する時間・場所の検出が可能であることが確認され,地域分析への応用可能性が示唆された.しかし,集積領域の候補を円形空間領域とした手法で分析を行ったため,取引集積が起こりえない公共用地が多く存在する地域を含んだ集積領域が検出されている.より適切な集積を検出するため,柔軟な空間形状を集積候補領域と設定する手法の適用が不可欠であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災による大学建物の被災により,これまでの研究成果にアクセスできず,また研究環境を喪失した状態が3ヶ月あまりあったため,年度前半には研究の進行に遅れが生じた.しかし,その後の研究環境の復旧に伴い,年度全般としては本年度の当初目的に沿った成果を出すことができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
計量地理分野で提案されている地理的加重回帰モデルと,空間統計分野で議論されてきたクリギングを組み合わせたGWR-Kと呼ばれる空間分析手法を活用した地域分析の実行を検討する. この手法は計算負荷が比較的大きいと予想されるので,これまで本プロジェクトで検討してきた不動産価格情報+の一部を用いた分析にならざるを得ないが,研究の推進に特に問題があるとは考えていない.
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