研究概要 |
本研究の目的は,地域間高規格道路整備の便益計測に有効とされている空間的応用一般均衡(SCGE)モデルにおいて,交通サービス生産と交通行動モデルを精緻化することにより,SCGEモデルによる便益評価の精度向上を図ることである. 平成22年度は,1既往研究の整理と2Barro型CES関数を用いたSCGEモデルの構築を行った.1では国内外のSCGEモデル研究に関する研究レビューを行い,従来のSCGEモデルはそこで用いられているCES関数とLeontief関数が必ずしも整合的ではなかった問題を指摘し,さらに交通サービスの生産に関するモデル化が不十分なため道路整備が交通サービスの生産面にもたらす効果が厳密に評価できていないことも指摘した.その点を踏まえ,2ではBarro型CES関数の導入によりCES関数とLeontief関数との不整合の問題は解消すること,そしてそれらを用いて交通サービス生産も明示的に考慮したSCGEモデルの開発を行った.さらに,それに基づけば道路整備がもたらす付加的な価値,すなわち輸送効率の向上による定時性や信頼性の確保に伴う効果の計測も可能であることを確認した. 当初はここまでが研究計画として想定していたものであるが,これに加え簡単なものではあるが,山梨県を対象とした数値シミュレーションを実行した.その結果,地域間高規格道路整備は企業の生産活動にもたらす効果とともに,家計の社会経済的活動水準の向上にもたらす効果も大きなものが期待できる点を明らかとした.
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