研究概要 |
都市道路網は徒歩や自転車と自動車が通行し,現在は歩道や自歩道もしくは路肩と車道に走行位置が実質的に分離されている.しかし,自動車の小型化や自転車交通の増大が進む近い将来においては,車道の一部を自転車道や歩道に変更するような道路空間の変更によって,都市道路網の利便性を高められる可能性がある.ただしこのとき,同じ道路区間を走行する交通手段間で相互に干渉し合うため,道路網整備案の評価には各交通手段でのサービスレベル変化を同時に考慮しなければならない. 平成23年度は,自転車の利用と自動車,鉄道,徒歩といったその他の交通手段との競合,および自転車走行帯の整備が自動車ネットワークの混雑に与える影響や,鉄道アクセスに与える利便性向上を考慮するため,詳細な自転車経路選択行動を明示的に扱った交通手段-経路選択行動統合モデルを構築した.さらにこのモデルを交通均衡配分モデルに組み込むことで,自動車との相互干渉を考慮した自転車走行空間の交通需要予測システムを構築した. さらに,構築した需要予測モデルを,名古屋市内の交通需要および道路ネットワークデータに適用した.この結果,現在名古屋市で進められている自転車走行空間の整備ネットワークでは,自転車を代表交通手段として利用する割合が増加するが鉄道の端末としては利用されにくく,むしろ鉄道利用者が減少する可能性があることや,今後の整備により自動車利用者の1~2%の減少と自転車利用が5%程度増加することなどが示された.
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は計画通りに研究が実施できたが,詳細にモデル化された自転車での経路選択行動と比較して,自動車の経路選択行動は旧来の簡単なモデルにとどまっている.そこで,本年度は,自動車を利用した場合のドライバーの経路選択行動を詳細にモデル化し,これを組み込んだミクロシミュレータを構築する.これにより,昨年度までの均衡配分モデルと比較して,より現実的な交通状況変化を反映した分析が可能になる.
|