研究概要 |
本研究では,グローバル化に伴って国際的に資源や労働の移動,生産物の貿易が活発に行われると同時に,ある国や地域のリスクが他の地域にも大きな影響を与えるマクロ経済の動学的な振舞いと,インフラストラクチャの役割について定性的,定量的に分析する. 22年度には,初めに1国が多地域により構成される動学的開放マクロ経済モデルを定式化した.そして災害のような局地的リスクの下での資本の地域間立地均衡を分析した.そして,交通基盤整備が進めば,生産要素や中間財,最終財の移動費用が減少することにより,企業の分散立地が進み,国内のリスクシェアリングが進む,その結果,リスクに曝された資本集約的なセクターが国内でより成長する可能性があり,国際貿易にも影響が及ぶ定性的な構造を示した. また,従来,利根川水系を対象に,動かない生産要素と考えられてきた水利権が移転した場合の経済成長効果を分析するための多部門動学モデルを定式化した.23年度は産業連関データを用いてパラメータを同定し,定量的分析を行う予定である. また,防災分野に特有の知識形成行動や研究開発の特徴を考慮した災害リスク下の経済成長モデルを定式化し,定性的構造の分析を行った. さらに,世代重複モデルを用いて,貨幣援助と実物援助が被災国の復興過程に与える長期的影響について分析した.とりわけ貨幣援助が,被災国家計に対して,インフラ等の資本の復興投資を行うインセンティブを与えうるかどうかに着目した.また,災害後に集中的に復旧された資本が,後の世代に更新需要などのかたちでどのような影響をもたらすかについて分析した. 22年度は各問題に関するモデルの定式化と定性的な構造分析を行った.23年度は実際のデータを用いた定量的分析に進む予定である.
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