研究概要 |
本年度は2011年3月11日に発生した東日本大震災の長期的な経済的影響を分析する研究に取り組んだ.従属経済(Dependent Economy)の構造をもつ国内3地域のマクロ経済モデルを定式化し,電力の減少や,道路などのインフラの損壊がもたらす被災地域の復興過程を検討した.このとき東北被災地域の部品製造部門に着目し,当部門の資本が損壊し,生産の減少によってサプライチェーンがダメージを受けたときの,国内他地域への産業連関効果や,貿易への影響をマクロ動学的視点から分析した. ついで,近年進められている住宅の長寿命化政策の効果について検討した.住宅市場のマッチングモデルを定式化し,家計の住環境へのニーズの変化等の影響が市場均衡に与える影響について数値解析を行った.それによって,住宅長寿命化は耐用年数超過住宅や住宅の取り壊しの減少をもたらす一方,資産価値の減少や,ニーズが変化した家計の住替え機会の減少を導く可能性があることを明らかにした.また,長寿命化政策を補完するために,中古住宅市場の活性化を促進することが効果的であることを示した. また,長期的な防災施設整備計画を分析するための確率的動学マクロ経済モデルを定式化し,数値シミュレーションを行った.さらに,インドネシア・メラピ地域の火山災害によってもたらされる土砂資源を,被災したインフラ復興に有効に用いるための戦略を検討するためのモデルのフレームを作成した.また,地域住民のコミュニケーションによる防災知識の形成過程に着目した災害リスク下の地域経済成長モデルの定性的分析を行った.
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