研究課題
前年度までで、統計的平均世帯の家屋耐震補強の事後補償制度に対する支払意志額は年間17600円であること推定していた。今年度は、その構成要因として、事後補償制度の主観的期待価値、リスクプレミアム、曖昧性プレミアム、その他の価値の4つを計量経済手法に基づいて推定した。その結果、主観的期待価値は年間700円、リスクプレミアムは0円、曖昧性プレミアムは3000円、その他の価値は13900円であった。その他の価値には、事後補償を付加することで万が一のことを考えなくてもよいという心の安寧の価値、住み慣れた自宅への愛着などの価値が大きいことが示唆された。また、確率地震動地図から得た確率発生の客観的確率と、気象庁と消防庁の報告書にある過去の地震による家屋倒壊データから推計された家屋倒壊確率により、事後補償制度を提供するコストを概算した。これらのデータから、家屋耐震補強の事後補償制度の費用便益分析を試算したところ、今後30年間の事後補償を付加するコストは統計的平均世帯の家屋に対して28.5万円なのに対し、世帯はそれに52.8万円の価値を認めることが明らかになった。そのため、耐震補強の促進政策として、事前に補助金を支払うより、まず耐震補強プランに事後補償制度を付加し、その残額を事前の補助金に充てることが効率的であることが示された。以上の研究成果は国際学会で複数回発表したあと、国際ジャーナルであるRisk Analysisに投稿し、掲載が決定している。Risk Analysisの査読意見の中に、時間的割引率に関する指摘があり、その解決のために防災・経済政策の経済評価を専門としているブリティッシュ・コロンビア大学のステファニー・チャン教授と、リスク政策分析を専門としているティム・マクダニエル教授に相談し、有益な助言を得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Risk Analysis
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Proc. of the 8th Annual Conference of International Institute for Infrastructure, Renewal and Reconstruction
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