研究概要 |
本研究は,いわき市三和町を対象として,現存コミュニティおよび消失コミュニティに関する実態調査を通してその存在を支えているシステムを明らかにすることを目的とするものである。また,消失過程の明確化を図り,原因と再生するための必要条件を追究し,大字単位,町全体としてのまちづくりとして広がりをもつことができるのかについて検討しようとするものである。 現存コミュニティに関する実態調査の結果,山岳信仰,農耕儀礼,女性の集いの3つの起源に基づくコミュニティを見出すことができ,その広がりを示すことができた。具体的には,山岳信仰については,大字全11地区に存在する「御塚神社」を活動拠点として,コミュニティが成立している。しかしながら,地区によっては獅子舞の奉納につながっている地区とつながっていない地区があり,そこには若者が少なくなり,獅子を務める者がいなくなったことにより消失したという過程を把握することができた。また,農耕儀礼については,年間を通した催し物の開催をみることができ,農耕に関する伝統は,時代が変わり,農作業を行う人口が年々減少している状況下においても,神仏に対する信仰心の強さと,人とのふれあい,共存し助け合うつながりがそれを支えていることがわかった。さらに,女性同士のコミュニティも存在している。十九夜と呼ばれる安産祈願や,嫁どうしの親睦を図る釜の神講のように既婚者を中心とするコミュニティが存在している。また,婦人消防隊は,全11地区に存在しており,多様な目的の下に活動していることがわかった。 全体を通して,大字(地区)が一つのまちづくり活動ユニットとして機能し得ることを明らかにすることができた。しかしながら地区間の連携や地区を超えた町全体としての広がりとはなっていないため,地区間のつながりを支えるシステムの構築のための必要条件について,今後は追究していきたい。
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