研究課題
浄水処理における微量汚染物質の除去において、粉末活性炭処理は重要な役割を果たしている。また、沈でん池や砂ろ過池における藻類の増殖抑制などの目的で行われることのある前塩素処理において、粉末活性炭との複合処理となる場合に活性炭からの脱着現象が見られることがある。本研究では、医薬品および臭気物質の粉末活性炭吸着性能、また、粉末活性炭処理と塩素添加の複合処理による、活性炭に吸着した物質の脱着について検討を行った。臭気物質の吸着についてはジェオスミンと2-MIBを用い、吸着速度および平衡吸着量について調べた。その結果、吸着速度・平衡吸着量ともにジェオスミンの方が2-MIBよりも大きい結果となった。理由の一つとして、2-MIBの方が親水性が高いため吸着能が低いことが推測された。また、塩素添加による脱着現象については、同等の条件下においてジェオスミンの脱着率が1割弱に対して、2-MIBは5割程度の脱着率を示した。吸着能が低い物質の方が脱着しやすい傾向が示された。医薬品については、酸性医薬品(スルファメメトキサゾール、イブプロフェン)と塩基性医薬品(トリメトプリン、メトクロミラミド)について、pHを変化させて吸着・脱着現象について検討した。吸着と脱着の傾向は臭気物質と同様であった。pHによる吸着性能は酸性医薬品についてはpHが上がるにつれて吸着能が低下する傾向があった。この主な原因として、pHを上げるにつれpKa前後で物質の解離状態が非解離からアニオンに変化することが推定された。一方、塩基性医薬品では、トリメトプリンの場合、pH4から7の範囲で吸着量が増加していった。一方、メトクロプラミドの場合は、pH4から10の範囲で吸着速度が減少する傾向があった。この傾向の違いは、使用した活性炭の違いに由来しており、被吸着物質のpKaに加えて、活性炭表面の荷電状態も影響していることが推測された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Water Research
巻: 45 ページ: 761-767
Water Science and Technology
巻: 62(11) ページ: 2664-2668
巻: 44 ページ: 4127-4136