研究概要 |
粉末活性炭添加後に塩素酸化処理を行うことによって,一度吸着された物質が脱着する現象が見られたことから,塩素酸化処理を行った粉末活性炭の表面分析を行うことにより,脱着現象のメカニズムについて検討を行った.塩素酸化前後の粉末活性炭について走査型電子顕微鏡を用いて画像を比較したところ,活性炭の表面構造が変化している様子が観察された.また,X線光電子分光法を用いて,塩素酸化前後の活性炭表面における酸素含有率を測定した結果,酸化後の活性炭に含有率の増加が見られた.エッチングにより,活性炭深さ方向における酸素含有率の変化を調べた結果,深さ1nm程度のごく表面において酸素量が増加していることが示された.これらのことから,塩素酸化による脱着現象および吸着量低下のメカニズムとして,活性炭表面に酸素元素を含む官能基が増加することによる可能性が示唆された. 特徴の異なる複数の活性炭を二段階で添加した実験においては,実験を行った範囲内においては相加的な効果が得られた.添加する順番により,それぞれの活性炭の特徴を生かすことができるような相互影響を得られるような結果には至らなかった. 自然水を用いた浄水処理実験において,凝集処理と粉末活性炭処理の複合処理および,その順番について,医薬品のスルファメトキサゾールとトリメトプリンを用いて,除去率に関する検討を行った.スルファメトキサゾールにおいては凝集剤と粉末活性炭の添加時期により除去率に大きな差はなかった.一方,トリメトプリンにおいては粉末活性炭単独の処理に比べて,凝集剤と活性炭の複合処理において除去率が減少した.これは,トリメトプリンは自然水中のpH範囲においてカチオンとして存在しているため,凝集剤の荷電の影響を受けたためと考えられた.
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