実験室規模の処理装置を利用して、基質としてNH_4-Nのみを含む人工下水を流入させてAOB集積汚泥を得た。そして、AOB集積汚泥量あたりのNH_4-N負荷を調整することにより、AOBの初期キノン含有量を変えて、バイアル試験により最大NH_4-N酸化速度に対する応答を調べた。その結果、初期キノン含有量が多いほど最大NH_4-N酸化速度が高くなることが見出された。しかし、初期キノン含有量だけではN_2Oの生成量を整理することはできなかった。バイアル試験中のNO_2濃度レベルにばらつきがあったことから、これが関係しているものと考えられた。そこで、初期NO_2濃度も調整したところ、N_2O生成量は、初期キノン含有量とNO_2濃度で定量的に説明できることが明らかとなった。 次に、下水処理施設の標準活性汚泥のN_2Oの生成・消費能力を調査したところ、生成能力の方が消費能力よりも4~23倍も高かった。N_2O生成の内訳を調べたところ、好気条件下であっても硝化よりも脱窒の方が6~12倍も寄与が大きかった。既存の研究では、N_2Oの生成を抑制する観点で研究がなされているが、この調査結果を見ると、消費を促進させる観点も必要のように考えられる。そこで、都市下水を用いてN_2O還元細菌を集積したところ、標準活性汚泥の242~692倍のN_2Oの消費能力を示した。このN_2O還元細菌に関する研究は、当初は予定していなかったが、本研究の過程で有望であることが示された。
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