研究概要 |
N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)は消毒工程で生成される微量汚染物質である。表流水や水道水におけるNDMAの報告例がある一方、国内における地下水中の実態については不明な点が多い。また、国内外を問わず、地下水中NDMA前駆物質を広域で調査した例はない。本年度は、東京近郊の地下水中NDMAとその生成能を調査し、その結果を河川水と比較した。 東京近郊の地下水(23地点)および河川水(15地点)を採取した。ガラス製繊維ろ紙でろ過した試液をNDMAおよびNDMA生成能(NDMA-FP(Cl2),NDMA-FP(NH2Cl))の分析に供した。NDMA-FP(NH2Cl)とNDMAの濃度の差をNDMA前駆物質濃度と定義した。その他の水質項目として、メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過後した試液の溶存有機炭素(DOC)とNH3を測定した。 東京近郊の地下水地下水および河川水中のNDMA濃度は、それぞれ<0.5-5.2ng/L(中央値0.9ng/L)、0.4-3.4ng/L(2.2ng/L)であった。地下水中のNDMA濃度は河川水と同程度かわずかに低かった。 NH3と遊離塩素によって生成されたNDMA(NDMA-FP(Cl2)とNDMAの差)の関係を調べたところ、ほとんどの試料において遊離塩素添加によるNDMAの顕著な生成は見られなかった(<4ng/L)が、高濃度のNH3を含む水試料からNDMAの生成が確認された。 地下水および河川水中のNDMA前駆物質濃度は、それぞれ4-84ng-NDMAeq./L(中央値10ng-NDMAeq./L)、11-185ng-NDMAeq./L(51ng/L)であり、地下水中のNDMA前駆物質濃度の方が河川水よりも有意に低かった。この一因として、土壌浸透過程で、NDMA前駆物質が吸着・揮発・微生物分解された可能性が考えられた。
|