研究概要 |
本研究では,レプトスピラ症とメコン住血吸虫症を代表として,水中の病原微生物による皮層を介した感染症のリスク評価モデルを開発することを第一の目的とする。さらに,開発した評価モデルを用いて,水域の汚染対策や水利用に関わる衛生教育などのシナリオのもとでリスク低減効果を算定し,効果的なリスク管理手法を提案することを最終の目的とする。 本年度の研究実施内容は以下の通りである。 ・前年度に開発したレプトスピラ症に関する用量反応モデルをより精緻化した。前年度よりも多くの実験データを入手し,レプトスピラの血清型や株による感染力の違いや,実験動物の感受性に関する考察を行いながら,リスク評価と管理に利用できるモデルのセットを整備した。これにより,水域の汚染やその利用に関する種々なシナリオのもとで,レプトスピラ症のリスク評価が可能となった。 ・整備されたモデルの実用例として,平成23年10~12月にタイのチャオプラヤ川流域で発生した大規模洪水時に,洪水との接触によるレプトスピラ症のリスク評価を試みた。しかしながら,洪水から菌が検出されず,リスク評価およびそれにもとづくリスク管理手法の提案には至らなかった。 ・メコン住血吸虫症については,前年度に収集した流行地における同疾病の発生データをもとに,皮膚を介した同症の感染リスク評価モデルの開発を行った。研究期間内に,実用可能な評価モデルを整備することはできなかったが,同症のリスク評価に関するフレームワークが構築され,今後のモデル開発研究につながる成果を得た。
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