研究概要 |
本研究では,近年社会的にも注目されているヒトノロウイルスを研究対象とし,その新たな代替指標として,培養可能なマウスノロウイルスを使用し,浄水および下水処理の各種処理法におけるマウスノロウイルスの低減効果(除去・不活化効果)を実験的に明らかにすることを最終目的としている。第一年度は,水中に低濃度で存在するノロウイルスを検出するために必須の手法である「ウイルス濃縮法」によるマウスノロウイルスの回収率を測定した。 甲府盆地内の下水処理場の流入水(50mL)および2次処理水,盆地内を流下する富士川の河川水(500mL)を採取し,マウスノロウイルスを高濃度で添加したものを実験原水として用いた。濃縮法として既存の3種類の手法(陽イオン吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法,陽イオン添加型陰電荷膜法,ウイルス・原虫同時濃縮法)を使用し,直径47mmの混合セルロース膜を用いて5~10mLに濃縮した。各濃縮法によるマウスノロウイルスの回収率は,水試料および濃縮法の種類によって変動し,良好な場合には60~100%の回収率が得られた。しかし,実験回数を重ねるにつれて回収率に低下傾向が見られ,マウスノロウイルスの保存株が凍結融解の繰り返しで不活化していることが示唆された。今後,保存株の取り扱い方法を改善し,さらなる知見の蓄積を続けることが求められる。
|