研究概要 |
本研究では,近年社会的にも注目されているヒトノロウイルスを研究対象とし,その新たな代替指標として,培養可能なマウスノロウイルスを使用し,浄水および下水処理の各種処理法におけるマウスノロウイルスの低減効果(除去・不活化効果)を実験的に明らかにすることを最終目的としている。平成23年度は,水中に低濃度で存在するウイルスや原虫などの病原微生物を網羅的に濃縮して検出可能な手法である陰電荷破砕型濃縮法を用い,マウスノロウイルスやその他のモデル微生物の回収率を測定した。また,濃縮液の長期保存による回収率の低減特性を把握した。 マウスノロウイルス,大腸菌ファージQβ,クリプトスポリジウムおよびジアルジアを河川水500mLに添加し,陰電荷破砕型濃縮法を用いて10mLに濃縮した後,濃縮前後の試料中の各微生物の濃度を定量して回収率を算出した。各微生物の平均回収率は,マウスノロウイルスが78%,大腸菌ファージQβが95%,クリプトスポリジウムが59%,ジアルジアが61%であり,いずれの微生物に対しても濃縮法が有効であることが分かった。これらの濃縮試料を4度または25度で最大12日間保存したところ,マウスノロウイルスと大腸菌ファージQβの回収率は,25度での保存では数日以内に1%以下にまで低下するものの,4度での保存によって回収率の低下を防ぐことができ,濃縮試料を冷蔵保存することの有効性が示唆された。一方,原虫の回収率の経時変化は保存温度には依存せず,原虫の環境中での高い耐性に起因していると考えられた。
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