研究概要 |
本研究では,近年その流行が社会的問題となっているヒトノロウイルスの水処理工程における低減効果を定量的に明らかにすることを目的とした。平成24年度は,ヒトノロウイルスに近縁であるマウスノロウイルスを用いた操作効率(濃縮回収率および遺伝子増幅効率)の補正操作を導入することにより,より正確な濃度定量を可能とする手法を確立した。この手法を国内の下水処理場で14ヶ月間にわたって採取した試料に適用した結果,流入水中におけるヒトノロウイルスの平均濃度は,遺伝子群GIが325,000コピー/L,GIIが10,800,000コピー/Lと算出された。一方,処理水中の平均濃度は,GIが3,280コピー/L,GIIが68,700コピー/Lとなった。マウスノロウイルスの操作効率は87.9~243.3%であり,いずれの下水試料においても深刻な阻害反応は確認されなかった。流入水と処理水のいずれからもヒトノロウイルスが検出された採水月における濃度測定結果を用い,下水処理場における人ノロウイルスの除去率を算出した結果,GIは2.09±0.51 log(n = 10),GIIは2.34±0.35 log(n = 5)となり,下水処理によって99%程度のウイルスの低減効果が期待できることを明らかにした。
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