従来の単一供給方式のUASBリアクターは酸生成速度とメタン生成速度のバランスが崩れると供給口付近で酸生成が優先し、pHの低下を招く可能性がある。その結果、メタン生成細菌の至適pH範囲外となり、メタン発酵プロセスが破綻する可能性がある。そこで、単一供給方式から多点分散供給方式にすることで酸生成速度とメタン生成速度のバランスを保ち、高さ方向に分散供給することにより、処理水循環を行うこと無くメタン発酵により生成されたアルカリ度の再利用を行い、外部から供給するアルカリ剤の削減を行う。本研究では、酸性廃水である芋焼酎蒸留廃水液画分を処理対象としてラボスケールUASBリアクターにおける多点分散供給方式でのアルカリ度削減効果について調査を行った。 UASBリアクターは液容積10L(高さ100cm)を高温および中温UASBリアクター2基を用いた。多点分散供給方式として、供給口をリアクター最下部、最下部より20cm、40cmの部分へ設置した。 COD容積負荷が8kgCOD/m^3/dayを越えると原水のpHが5.75を下回り、COD容積負荷を増加させる際に中温UASBのアルカリ度は一時的に低下がみられるようになったが、運転を継続することにより処理が安定し、高温UASBと同等のアルカリ度を保つことが可能であった。また、COD容積負荷を上昇させ、COD容積負荷15kgCOD/m^3/dayで運転を行った。原水槽のpHは5.0を下回ったが、高温及び中温UASBは安定した処理が可能であった。これらのことからCOD容積負荷15kgCOD/m^3/day程度では高温UASB、中温UASBはともに安定した運転が可能であり、供給アルカリ剤の削減も可能であることがわかった。
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