研究概要 |
近年、湖沼等の閉鎖性水域において難分解性有機物の増加・蓄積が報告されるなど、流域圏における有機物の動態や生態系への影響に注目が集まっている。しかし、機器分析により明らかにできる成分は、有機物全体の10~20%程度と言われ、有機物の発生源や水環境中における環境動態および機能・役割についてはほとんど明らかにされておらず、湖沼等の有機物に関する基盤情報が欠如している。本研究課題は、流域圏における溶存有機物(dissolved organic matter, DOM)の機能や役割の解明に向け、固相抽出法およびLC/MS法を組み合わせた解析手法の新規開発を行うものである。 平成22年度は、研究計画全体を踏まえ、文献考察および固相抽出法について検討を行った。現在のところ、湖沼の有機物を網羅的かつ定量的に解析できる体系的な手法は見当たらない。そのため、先進的な(環境)分析関連雑誌で発表されている文献等を調査した結果、XAD-8分画法をベースにした固相抽出法が本研究課題の目的に適しており、より効率的なメソッドを開発できることが明らかとなった。従来のXAD-8法と比べて簡便で高回収率な手法を確立するために、試料の濃縮・精製において非常に優れた手法であり、かつ操作性、簡便性等の利点を持ち合わせている固相抽出法を採用した。平成22年度は、固相カートリッジの選定から洗浄、コンディショニング、保持・溶出の各操作について検討を実施した。 本研究課題では、水環境中の有機物全体を網羅的かつ定量的に検出できる解析・評価手法の新規開発を目指すものであり、固相抽出とLC/MSを組み合わせた新規解析手法により湖沼の有機物研究のさらなる発展に資することが期待できる。
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