本研究では、設計で想定されている地震動を上回る巨大地震動や、長周期地震動を免震建物が受けた場合の、免震層と基礎擁壁部との衝突防止を目的としている。本年度の研究成果は以下の3つである。 1.すべり支承を有する3層すべり支承免震住宅に関する検討(数値解析) 3階建てのすべり支承免震住宅を対象に、地震動入力レベルを3種類設定しそれぞれのレベルごとに設計クライテリアを設けた。その設計条件を満たす連結機構摩擦ダンパーの設計をするために、最適設計手法を利用して設計解が存在するかを検討した。その結果、免震層の最大応答変位と最大応答加速度はトレードオフの関係にあること、また連結機構摩擦ダンパーを適切に設計することで、免震住宅としての性能を保つような設計クライテリアを満たすことを明らかにした。 2.連結機構摩擦ダンパーを複数台設置した場合の、多段連結機構摩擦ダンパーの有効性と設計法提案(数値解析) 上記数値解析結果を受けて、より厳しい設計クライテリアに対してもすべり支承免震住宅の設計を可能とするための検討として、3つの地震動入力レベルをそれぞれ対象とした3台の連結機構摩擦ダンパーを設置し、地震入力レベルごとにより詳細な設計を可能とする、多段方式連結機構摩擦ダンパーを検討した。設計では、最適設計問題を各地震動ごとに段階的に設定して順次解いていく、段階的最適設計問題を設定し、多段連結機構摩擦ダンパーの諸元を設定した。その結果、多段方式連結機構摩擦ダンパーによって、すべり免震支承住宅の設計クライテリアを項目1に比べて厳しくすることができることを明らかにした。さらに、得られた最適設計解付近に対する感度分析を行い、得られた解に対する設計的なロバスト性を明らかにした。
|