研究概要 |
鉄骨と繊維補強コンクリートのみから構成されるCES (Concrete Encased Steel)構造システムは、これまでの柱,柱梁接合部,2層2スパンフレームを用いた構造実験から,優れた復元力特性および安定した履歴特性を示し,高い耐震性能を有することが示されてきた。一方,建築物の主要耐震部材のひとつである耐震壁については,CES構造においても剛性および強度を確保する上で有効である。しかし,柱および梁に充腹形鉄骨が内蔵されているCES構造では,SRC構造と同様に,壁筋の配筋が困難であることは想像に難くない。本研究では、施工性に優れ、高耐震性を有するCES造耐震壁の開発を目的としている。本年度は、CES造周辺架構と壁板との定着を簡略化した一体打ちCES造耐震壁および壁板をPCa化したCES造耐震壁を用いて静的加力実験を実施することにより,当該耐震壁の耐力と変形性能および破壊メカニズム等の基礎的な耐震性能について検証した。本年度の研究により得られた知見を以下に示す。1)壁縦筋および横筋の定着を省略したCES造耐震壁試験体は,壁縦筋の定着のみ省略した試験体と比較して,最大耐力は同程度であった。また,前者は耐力低下が緩やかになり,変形性能が向上する結果となった。2)どの試験体も,壁板隅角部コンクリートの圧壊および側柱のせん断破壊が著しかったが,PCa壁試験体は,小振幅レベルのときに水平および鉛直接合面にずれが生じ始め,開き量も大きかったことから,ずれ破壊が生じたと考えられる。3)PCa壁試験体の耐力は一体打ち試験体の耐力より2割ほど小さかったが,耐力の低下は小さく累積消費エネルギーを見ると同程度であった。以上のことから壁筋の定着がCES造耐震壁の耐力性能に及ぼす影響は小さく、壁筋の定着を省略可能であることが明らかとなった。
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