研究概要 |
プレストレストコンクリート(PC)圧着柱部材の補修前後の構造性能に関する基本的な知見を収集することを目的に、6体のPC圧着柱試験体に対して静的載荷実験及び補修を実施した。実験変数は、PC鋼材種及び補修前載荷(1次載荷)の損傷レベルである。PC鋼材種は、一般的に使用される丸鋼棒に加え、異形鋼棒(付着力大)及びアンボンド鋼棒(付着力無)の3種類を、1次載荷の損傷レベルは、損傷量小:最大耐力レベル、損傷量大:最大耐力経験後に最大耐力の90%まで低下したレベル(終局限界状態を想定)の2種類をそれぞれ設定した。まず、1次載荷で健全な部材に対して載荷を行って部材に損傷を与えた後,損傷部位に対してポリマーセメントモルタルによる断面修復を行い、大地震時を想定した大変形域まで載荷(2次載荷)を行った。その結果、補修後の部材では健全な部材に比べて初期剛性が低下し、その低下率は1次載荷の損傷レベルの影響を受けることが分かった。また、1次載荷の損傷レベルによって、補修後の耐力が向上する場合と低下する場合があることが確認された。他にも、1次載荷での損傷が大きい場合には、既存部と補修部の一体性が早期に失われ、期待した耐力が得られない可能性があることを示した。これらのデータは、PC圧着柱部材の修復限界状態を定義する上で有用な基礎的資料となる。また、数少ないPC圧着柱の実験資料として、1次載荷で得られた実験結果を用いて、初期剛性や最大耐力等の構造性能に対して、PC鋼材の付着性状が及ぼす影響に関する知見も併せて得ることができた。
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