研究概要 |
プレストレストコンクリート圧着柱部材の補修前後の構造性能回復に関する知見の収集を目的として,2体のPC圧着柱試験体に対して静的載荷実験および補修・補強を実施した。2010年度に実施した載荷実験ではポリマーセメントモルタル(PCM)による補修部が早期に剥離し,補修範囲が広い試験体では断面解析で得られるような復元力特性を発揮できなかった結果を踏まえ,2011年度にはPCMによる断面修復に加えて鋼管巻き立てを行った試験体を対象とした。実験変数は補修前載荷(一次載荷)での損傷レベルとし,損傷量小(最大耐力レベル),損傷量大(終局限界状態を想定し,最大耐力経験後に最大耐力の90%まで低下したレベル)の2種類とした。一次載荷での損傷量が小さな試験体では,初期剛性が一次載荷の9割程度まで回復したほか,断面修復のみの試験体に比べて最大耐力の増大,残留変形の低減を確認することができ,構造性能が大きく回復した。その一方で,一次載荷での損傷量が大きな試験体では,補修部が早期に剥離し,その後も断面修復のみの場合と同様に十分な耐力の回復が見られず,鋼管巻き立てによる補強効果を十分に得ることはできなかった。よって,最大耐力点程度の変形を受けた場合であれば,本研究で用いたPCMによる断面補修や鋼管巻き立てなどの一般的な方法で構造性能回復を図ることが可能であるが,終局限界状態を経験したような場合には,剥離した補修部に対して能動的に拘束できる方法を検討すべきであると考えられる。
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