研究概要 |
2009年にインドネシアで発生した二つの地震(ジャワ島西部地震とスマトラ島西部地震),2010年に入り発生したハイチ地震などにおいては,組積造住宅の倒壊により甚大な人的被害をもたらす大災害となっている。これより,既存建物の耐震化が将来の地震災害の軽減のために急務であると考えられる。本研究では途上国における安全な住環境づくりのため,既存組積造壁体の有効な耐震補強法の開発を行う。 昨年度は,コンクリートブロックを用いた組積造壁体2体を製作し,ポリマーセメントモルタル(PCM)を用いた新たな耐震補強法について検討を行った。今年度は昨年度に引き続き2体の試験体に対して実験を実施し,全4体の実験結果について検討を行った。対象としたブロック造壁体の構造は,部分的に鉄筋を配置しモルタルを充填するタイプのもので,日本国内においても使用されている。以下に研究の結果をまとめて示す。 1.PCMにより壁体を増厚することにより最大耐力に関して顕著な補強効果が得られた。 2.PCM補強されたブロック造壁体のせん断終局強度の実験値は,ブロック造壁体とPCM壁体それぞれのせん断強度の計算値を単純累加することにより概ね評価できた。 さらに,煉瓦を用いた組積造壁体に対してもPCM補強の効果を検討するため,3体の試験体を設計・製作し,実験を実施した。得られた結果を以下にまとめて示す。 3.PCMは無補強煉瓦造壁体の耐震補強にも有効である。 4.煉瓦造壁体とPCM壁体それぞれの耐力の計算値を単純累加して求めたせん断強度の計算値は,補強試験体の実験値に対して若干過大となった。計算値の精度向上は今後の課題である。
|