平成22年度は、免震建物の地震応答構造の分析とこれに対応したせん断力係数分布の基本特性の抽出を目的として、免震層上部構造部の階数および固有周期、免震層のダンパーの降伏変位および降伏耐力、入力地震動(告示適合波)の位相特性などをパラメータとした地震応答解析を実施し、この解析によって、免震構造の特徴である剛体モードと上部構造の応答を支配する高次モードの影響度を評価し、せん断力係数分布においてこれを定量化した。得られた主な研究成果は次のとおりである。 1、せん断力係数分布は特定のパラメータの範囲で、免震告示に代表されるAi分布では地震応答を過小評価する。2、せん断力係数分布は入力地震動の位相特性によって大きくばらつく性質を有する。3、免震デバイスと上部構造の構造特性を相対的に評価し得る指標として、スキナーが提示した免震係数と非線形係数は有用である。4、せん断力係数分布の増幅は、免震係数の減少ならびに非線形係数の増加によって引き起こされる。5、免震係数と非線形係数を用いてせん断力係数分布の平均値を評価する応答評価式と変動係数を考慮した安全率を提案した。6、平均値を評価する応答評価式は、免震告示の応答評価式を安全側へ修正し、かつ、免震構造設計指針(日本建築学会)に示される応答評価式よりも精度が高いことを確認した。7、トリリニア型またはRamberg-Osgood型の復元力特性を有する場合に対しても応答評価式が適用できるように、バイリニア型への置換法を提案した。
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